事業概要

事業概要

地球規模の気温上昇と気候変動の原因のひとつは温室効果ガスの蓄積にあり、その解決法の一つとして植物の光合成促進によるCO2吸収/蓄積の強化が挙げられます。

また、増え続ける人口を支える食糧増産の問題においても植物の改良育種は喫緊の課題です。

植物改良の標的となる遺伝情報については、核だけでなく葉緑体とミトコンドリアという二種類の細胞小器官 (オルガネラの中にも存在します (= オルガネラゲノム)。

 

 

オルガネラゲノムには光合成や呼吸など植物エネルギー生産に関わる主要遺伝子や、現代農業ハイブリッド育種を支える細胞質雄性不稔 (CMS) という重要形質を担う遺伝子が含まれており、今後の植物の高度利用を考えた際にはこれらの理解と育種改良は必須であると言えます。しかし、これまでこれらのオルガネラゲノムの改変は困難 (葉緑体) または不可能 (ミトコンドリア) であるとされ、この技術的な障壁がオルガネラゲノムの基礎研究と応用展開の律速および障害となっていました。

 

 

そのような背景の中、本事業の東京大学拠点コーディネーターである有村准教授らの研究グループは、近年世界初の「植物ミトコンドリアゲノム編集技術」と「葉緑体ゲノムの標的一文字編集技術」の開発に成功しました。この二つの技術は現在、世界を先導する技術的ブレークスルーとして今後の植物オルガネラの基礎科学と応用展開への大きな貢献が期待されています。

 

 

本事業ではこれらの技術を基軸と契機として、ミトコンドリア研究で最先端を走るフランス国立科学研究センター/ストラスブール大学のGualberto教授らと、また葉緑体ゲノム機能発揮の世界的研究者であるドイツフンボルト大学のSchmitz-Linneweber教授らを相手拠点代表として、3カ国の多様な植物オルガネラ研究者との最先端共同研究を多角的に推進させます。共同研究と同時に、期間中に各国が国際会議を主催し、若手研究者や大学院生の研究交流を行うことで、地球規模の問題である食糧増産とCO2吸収とエネルギー問題に直結する葉緑体-ミトコンドリアの基礎研究を長期的に進展させ、世界に貢献する国際研究交流拠点の形成を目指します。